【うつ病】過去5年遡及。25年前の廃院内科を「紹介状」で初診日特定
目次
💡 この受給事例の要点(概要)
- 傷病名・等級: うつ病(障害基礎年金 2級)
- ポイント: 精神科が初診だと思って書類を取得したところ、その前に受診していた「内科(すでに廃院)」の存在が発覚。治療の証拠がなく行き詰まる中、3か所目の転院先に保管されていた「当時の内科からの紹介状コピー」を取得。初診日を立証するとともに、診断書という「点」と「点」の間の20年以上を申立書で繋ぎ、5年遡及での受給が認められた事例です。
本事例の基本情報と受給結果
「廃院により初診日の証拠がない」という状況の中、3か所目の病院から『当時の紹介状のコピー』を取得。過去5年分の遡及(そきゅう)受給が認められた事例です。
長年にわたり不眠や抑うつ症状、極度の疲労感に悩まされていた60代女性の事例をご紹介いたします。
将来への経済的なご不安から障害年金の申請をご希望され、当事務所へご相談にいらっしゃいました。
ご相談者様の基本情報
| 年代・性別 | 60代・女性 |
|---|---|
| 対象となる主病名 | うつ病 |
| 決定した年金と等級 | 障害基礎年金 2級(5年遡及) |
| 制度上のポイント | ・受証の取得による「前医(廃院)」の発覚 ・転院先(3か所目)の医療記録からの証拠収集 ・20年以上の空白期間を埋める申立書の作成 ・障害認定日への遡及請求(過去分の受給) |
| 現在の就労状況 | 短期離職を繰り返していた |
ポイント①:精神科が初診と思いきや…発覚した「廃院した内科」の存在
精神科が初めての受診だと思い書類(受診状況等証明書)を取得したところ、実はその前に内科を受診していた記録が判明。しかしその内科はすでに「廃院」しており、治療の証拠が一切ないという壁に直面しました。
障害年金の申請において最も重要となるのが、「初めて医師の診察を受けた日(初診日)」の証明です。当初、「25年前に行った精神科」が初診日であると認識されていました。
しかし、当事務所でその精神科から「受診状況等証明書(初診日の証明書)」を取り寄せたところ、『当院の前に、○○内科を受診している』という記載が見つかりました。
その内科を調べましたが、すでに廃院しておりカルテも存在しませんでした。このままでは、「内科で精神疾患の治療を受けていたのか、ただ単に相談した程度なのか」の根拠が全くなく、年金事務所の審査で初診日として認められないリスクがありました。
ポイント②:3か所目の病院に保管されていた「当時の紹介状」を取得
後に転院した「3か所目の病院」から、当時の内科医が作成した『紹介状のコピー』が保管されているのを取得しました。
【2か所目(精神科)の書類を取得】
「実はその前に別の内科(1か所目)に行っていた」と記載あり
⬇
【1か所目(内科)を調べるも「廃院」】
治療の証拠なし。どこが精神科領域の初診か証明できない
⬇
【3か所目の病院を徹底調査!】
最初の内科医から宛てられた「紹介状のコピー」が残っていた
└ 初診日・精神の病名・抗うつ薬の処方が判明 ┘
客観的証拠がなければ、過去の記録を組み合わせる
廃院により行き詰まったかに見えましたが、次に考えるべきは「その後の転院先」に証拠が残っていないかを探ることです。
3か所目に受診された医療機関へ確認を行ったところ、最初の内科医が宛てた「紹介状(診療情報提供書)のコピー」が2つ目の病院からの紹介状と共に保管されていることが判明しました。
この紹介状には、初診日当時の日付とともに、精神の病名と、「抗うつ薬」を処方していた事実がはっきりと記載されていました。この一枚の紙が、初診日を特定する客観的証拠となりました。
ポイント③:空白の20年以上を申立書で繋ぎ、過去5年分の遡及請求に成功
遡及請求では「初診日から1年半後」と「現在」の2枚の診断書を提出しますが、その間にある20年以上の空白期間を『病歴・就労状況等申立書』で矛盾なく書き上げる必要がありました。
診断書という「点」と「点」を、申立書で繋ぎ合わせる
初診日が確定し、遡及請求(過去にさかのぼっての請求)を行うにあたり、もう一つの大きな壁がありました。それは、20年以上にも及ぶ「空白期間の証明」です。
遡及請求において必要な診断書は、「障害認定日(初診日から1年6ヶ月後)」と「現在」の2枚のみです。つまり、医師に作成いただく診断書は、長い病歴の中の特定の時期を切り取った「点」にすぎません。
障害年金の審査では、この「点と点を繋ぐ」作業が重要になります。診断書がない20年以上の空白期間に、ご本人がどのような症状で、どのような生活を送ってきたのか。当事務所でヒアリングを行い、20年分の出来事を『病歴・就労状況等申立書』として矛盾なく繋ぎ合わせ、診断書を補強する一本の線として提出しました。
結果として、整合性が認められ、25年前の廃院した内科を初診日とする「障害基礎年金2級」の受給が決定いたしました。法律上、年金を受け取る権利は5年で時効を迎えますが、今回は時効にかからない直近の過去5年分が一括で支給され、経済的不安を和らげる結果となりました。
📚 障害年金を申請する前に知っておきたい「基本のキ」
1. 初診日の原則の考え方(なぜ初診日が最優先されるのか?)
障害年金の手続きにおいて、すべての出発点となるのが「初診日」です。初診日とは、障害の原因となった病気やケガで、初めて医師または歯科医師の診療を受けた日を指します。
初診日がこれほど重要な理由は、以下の3つの基準がすべて「初診日」によって決まるからです。
- 受け取る年金の種類が決まる(初診日に加入していたのが国民年金か厚生年金か)
- 保険料の納付要件を満たしているか判断する
- 障害認定日(審査基準日)が決まる
【実務上のポイント】
精神疾患の場合、「不眠」や「食欲不振」「極度の疲労感」などの症状で、最初は内科や心療内科を受診するケースが多々あります。内科が初診となるのか、精神科が初診となるかは見極めが非常に難しく、一律ではありません。
2. 遡及請求(過去にさかのぼっての請求)の仕組みと5年の壁
通常、障害年金は「申請した翌月分」から支給されますが、障害認定日(初診日から1年6ヶ月経過した日など)の時点で受給基準を満たしていた場合は、過去にさかのぼって年金を請求できる「障害認定日請求(遡及請求)」が可能です。
ただし、法律の規定により年金を受け取る権利は5年で時効となります。そのため、障害認定日が10年前であっても、さかのぼって受給できるのは請求した時点から過去5年分(最大5年分の一時金)となります。
🌸 社会保険労務士からのメッセージ
「書類を取ってみたら、廃院している昔の病院が初診だと分かった」というケースは、ご自身で申請しようとすると年金事務所の窓口で難航し、途中で諦めてしまう方が非常に多いのが実情です。
しかし、今回のように1番目の病院に記録がなくても、2番目、3番目に通った病院のカルテを調査することで「当時の紹介状」などの証拠が見つかり、突破口が開けるケースもございます。
ただし、実務上すべてのケースにおいて「内科を受診した日」が精神疾患の初診日として認められるわけではありません。また、初診日より前に年金保険料の「未納」がある場合、初診日を立証するハードルはさらにシビアになります。
今回、過去5年分の遡及請求という結果を得られたのは、ご本人様がこれまで保険料をしっかりと納め続けてこられた事実が功を奏したのだと感じております。
初診日の証明や保険料の要件でお悩みの方も、決して自己判断で諦めず、まずは専門家である私たちにご相談いただければと思います。
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この記事を書いた人:神尾 愛(社会保険労務士)
上野・錦糸町・北区エリアを中心に活動する障害年金専門の社労士。「えがお」をモットーに、複雑な制度をわかりやすく解説し、申請の代行を行っています。地域の勉強会や相談会も定期的に開催中。一人で悩まず、まずはお声がけください。


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